函館旅行の計画を立てていると、ガイドブックでも地図アプリでも必ず目に入るのが「天使の聖母トラピスチヌ修道院」です。ただ、名前は知っていても「修道院って観光客が入っていいの?」「中で何が見られるの?」「函館駅からどうやって行くの?」と、行く前にモヤっとする人は多いはずです。
先に結論をお伝えすると、トラピスチヌ修道院は入場無料で、前庭と売店に併設された資料室を見学できます。聖堂の中には入れませんが、煉瓦の外壁と半円アーチの窓が並ぶ建物を正面から眺め、修道女が手作りするマダレナを買って帰る、という30~45分のコースが基本形です。湯の川温泉や函館空港から近い場所にあるので、旅の初日か最終日に組み込むと動きやすくなります。
この記事では、季節で変わる開門時間、バスで行くときの「降りるバス停」の違い、見学できる範囲と建物の見どころ、明治31年から続く歴史、売店のお菓子の値段、そして市民の森や湯の川と組み合わせた回り方まで、函館を何度も歩いてきた地元目線でまとめました。
・トラピスチヌ修道院で「入れる場所」と「入れない場所」の線引き
・季節ごとの開門時間と、バス・車での行き方の選び方
・マダレナやクッキーなど修道院のお菓子の値段と買い方
・市民の森・湯の川温泉と組み合わせるシーン別の回り方
天使の聖母トラピスチヌ修道院はどんな場所?観光前に知りたい基本

日本で最初に生まれた「祈りのための女子修道院」
トラピスチヌ修道院は、1898(明治31)年に創立された日本初の女子観想修道院です。「観想修道院」とは、外に出て布教や教育をするのではなく、修道院の中で祈りと労働を続けることを生活の中心に置く修道院のこと。正式名称は「厳律シトー会 天使の聖母トラピスチヌ修道院」で、地元では「天使園」という通称でも知られています。
創立したのは、フランスのナンシー近郊のウプシー修道院から派遣された8名の修道女です。明治の半ばに、フランスから海を渡って函館の高台に修道院を開いたと考えると、それだけで背景の重みが伝わってきますよね。
観光で訪れる人の多くは「きれいな建物がある観光スポット」というイメージで来ますが、ここは今も修道女が暮らし、毎日祈りを捧げている現役の修道院です。一人旅で静かに過ごしたい人にも、家族で函館の歴史に触れたい人にも向いていますが、テーマパークのような「見せるための施設」ではない点だけは頭に入れておくと、現地での過ごし方がぐっと自然になります。
入場料は無料、でも入れる範囲は決まっている
入場料は無料です。門が開いている時間なら、予約なしでふらっと立ち寄れます。見学できるのは、聖堂を望む前庭と、売店に併設されている資料室です。資料室では院内での生活や修道院の歴史が紹介されていて、外からは見えない修道女の日々を知る手がかりになります。
一方で、聖堂は修道生活の場なので、通常は中に入れません。「教会みたいに中の祭壇やステンドグラスを見学できる」と思って行くと、門の外から聖堂を眺めるだけで終わった印象になり、物足りなく感じるかもしれません。
デートで訪れるカップルや、写真を撮りたい一人旅の人にとっては、前庭から見上げる聖堂の外観そのものが見どころです。歩いて回る範囲がコンパクトなので、小さな子ども連れや、足腰に不安のある年配の家族と一緒でも負担は少なめ。ただし、修道院の敷地内は静かに過ごすのが前提なので、大声での会話や走り回るのは控えましょう。
見学の所要時間は30~45分が目安
前庭を歩き、聖堂の外観をゆっくり眺め、資料室と売店をのぞくと、所要時間は30~45分が目安です。向かいにある市民の森まで散策するなら、全体で1.5時間ほど見ておくと余裕を持って回れます。
この所要時間を知っておくと、函館旅行のスケジュールに組み込みやすくなります。たとえば、函館空港に着いてすぐ立ち寄り、そのまま湯の川温泉の宿にチェックインする。あるいは最終日、飛行機の時間までの隙間に寄る。そんな「すき間時間の観光」にちょうどいいサイズ感です。
注意したいのは、バスで来た場合の帰りの時間です。シャトルバスは1時間に1本の運行間隔なので、見学が30分で終わっても次のバスまで待つことになります。到着したら最初にバス停で帰りの時刻を確認し、見学時間をそこから逆算して決めるのが、現地で慌てないコツです。
北斗市の「トラピスト修道院」とは別の場所
函館観光でよく混同されるのが、名前の似た「トラピスト修道院」です。トラピスチヌ修道院は函館市上湯川町にある女子修道院、トラピスト修道院は北斗市にある男子修道院で、場所も見学の仕方も異なります。
カーナビや地図アプリで「トラピスト」と入れると男子修道院のほうが出てくることがあり、函館空港から向かうつもりが、まったく別方向へ走ってしまったという話も耳にします。レンタカーで回る人は、目的地を「トラピスチヌ」と最後まで入力して確認してください。
両方とも回りたい人は、1日で制覇するよりも、トラピスチヌは湯の川・空港エリア、トラピストは北斗市側の観光とセットにするほうが移動のロスが少なく済みます。トラピスト修道院の歩き方は、別の記事で詳しくまとめています。

函館旅行の予定を組んでいて「トラピスト修道院って行く価値ある?」「そもそも中を見学できるの?」と手が止まっていませんか。ガイドブックには杉並木の写真だけが載って…
| 住所 | 〒042-0914 北海道函館市上湯川町346 |
| 電話番号 | 0138-57-2839 |
| 営業時間 | 入場門開閉・売店・資料館: 3月・4月・10月・11月 8:30~16:30/5月~9月 8:30~17:00/12月~2月 9:00~16:00 |
| 定休日 | 年末年始(12月29日~1月2日)。定期閉門日なし(工事などで臨時閉門あり) |
| アクセス | 函館バス5系統シャトルバス「トラピスチヌ前」下車すぐ/路線バス「トラピスチヌ入口」下車 徒歩10分 |
| 駐車場 | 専用駐車場なし(隣接の市民の森有料駐車場を利用。市民の森売店専用の無料駐車場2台あり) |
| 公式サイト | 公式サイト |
開門時間は季節で3パターン、行く時間帯の決め方
春秋・夏・冬で閉門時刻が変わる
トラピスチヌ修道院の入場門の開閉、売店・資料館の開館時間は、季節によって3パターンに分かれています。3月・4月・10月・11月は8:30~16:30、5月~9月は8:30~17:00、12月~2月は9:00~16:00です。
夏に訪れる人は17:00まで余裕がありますが、冬は9:00開門・16:00閉門と、前後が30分~1時間ずつ短くなります。函館の冬は日の入りも早いので、午後遅くに行くと前庭がすでに薄暗く、写真もきれいに撮れません。
家族旅行で午前中に朝市、午後に修道院という組み方をする場合、冬場は昼食後すぐに移動するくらいのペースがちょうどいいです。「夕方に寄ればいいか」と後回しにすると、到着した時には門が閉まっていた、ということになりかねません。
| 時期 | 開門・売店・資料館 | 訪問のポイント |
|---|---|---|
| 3月・4月・10月・11月 | 8:30~16:30 | 朝晩は冷えるので上着必須 |
| 5月~9月 | 8:30~17:00 | 一番長く開いている季節 |
| 12月~2月 | 9:00~16:00 | 雪道と早い閉門に注意 |
出典:函館市公式観光情報はこぶら「トラピスチヌ修道院」をもとにさっぽろノート作成
休みは年末年始だけ、2016年から定休日なし
休みは年末年始(12月29日~1月2日)だけです。2016年から定休日なしになり、定期的な閉門日はありません。以前は曜日によって閉まる日があったので、古いガイドブックやブログを見て「この日は休みだ」と勘違いしないようにしましょう。
ただし、工事などの場合には臨時閉門があります。平日しか休めない出張ついでの人も、土日に家族で行く人も、基本的には曜日を気にせず予定を立てられますが、確実に行きたい日が決まっているなら、直前に函館市の観光情報サイト「はこぶら」や修道院の公式サイトのお知らせを確認しておくと安心です。
年末年始に函館旅行をする人は要注意。12月29日から1月2日までは門が開かないので、年越し旅行でトラピスチヌを目的にしている場合は、日程をずらすか、ほかのスポットに切り替える必要があります。
受付館の電話受付時間は見学時間と別
見落としがちなのが、修道院の受付館の受付時間です。公式サイトには、受付時間が9:00~11:30と14:00~16:30と記載されています。これは門の開閉時間とは別の、問い合わせやミサ参加の相談などを受け付ける時間です。
たとえばクリスマスのミサに参加したい、団体で訪れる前に相談したいという場合は、この時間帯に連絡する必要があります。昼の11:30~14:00は受付が止まっているので、昼休みに電話をかけてもつながらない可能性が高いです。
観光で前庭と売店を見るだけなら事前連絡は不要です。ただ、修道院の方は祈りと労働の時間割の中で生活しているので、気軽な質問の電話は控え、公式サイトやはこぶらで分かることは先に調べておくのがマナーです。
ゆっくり見たいなら午前の早い時間
静かな雰囲気を味わいたいなら、開門直後の午前中がおすすめです。観光バスのツアーや、湯の川温泉をチェックアウトした観光客が動き出す前の時間帯は、前庭を歩く人もまばらで、聖堂を正面から撮るときも人が入り込みにくくなります。
湯の川温泉に泊まった翌朝、チェックアウト後にそのまま向かえば、開門から間もない時間に着けます。夏場なら8:30から開いているので、朝食後に寄ってから市街地へ戻る、という動きがきれいにはまります。
反対に、昼前後から午後にかけては観光客が増えやすく、売店のレジ前に列ができることもあります。お菓子をじっくり選びたい人ほど、午前中の早めの時間帯が向いています。
函館駅・湯の川・空港からの行き方、降りるバス停で差が出る

いちばんラクなのはシャトルバスで「トラピスチヌ前」
公共交通で行くなら、函館バスの5系統シャトルバスで「トラピスチヌ前」下車が一番ラクです。このシャトルバスは函館駅前から五稜郭タワー前、湯の川温泉、函館空港などを経由してトラピスチヌ前まで走るルートで、バス停を降りたら道路を渡ってすぐ修道院の入口です。
五稜郭観光や湯の川温泉とつなげやすいのが強みで、「朝は函館駅周辺、昼に五稜郭、午後にトラピスチヌ」といった一日の流れに乗せやすい路線です。重い荷物を持った旅行者や、坂道を避けたい家族連れには特に向いています。
注意点は、運行間隔が1時間に1本と少ないことです。さらに途中まで同じ経路で行き先が異なる系統もあるため、乗車前に行き先表示で「トラピスチヌ」と書かれているかを確認してください。運賃や時刻表は改定されることがあるので、乗る前に函館バスの公式サイトで最新情報をチェックしておきましょう。
路線バスの「トラピスチヌ入口」は坂道を歩く覚悟で
シャトルバスの時間が合わないときは、一般の路線バスで「トラピスチヌ入口」下車という方法もあります。こちらは本数の選択肢が増える一方で、バス停から修道院の正門まで坂道を上って徒歩10分ほどかかります。
体力に自信のある一人旅の人なら、坂道を歩きながら高台の空気を感じられるので、それはそれで悪くない道のりです。夏なら「行きはシャトルバスでトラピスチヌ前へ、帰りは坂道を下ってトラピスチヌ入口から路線バス」という組み合わせにすると、上りの負担を避けつつ帰りの便の選択肢を広げられます。
ただ、冬は話が別です。雪や凍結した坂道を10分歩くのは、雪道に慣れていない人には想像以上に負担になります。
【状況】12月、スニーカーで路線バスに乗り「トラピスチヌ入口」で下車。凍った坂道をそろそろ歩いて正門に着いた時には閉門時刻の16:00が迫っていた。
【原因】「入口」という名前から門の目の前だと思い込み、徒歩10分の上り坂を想定していなかった。
【対策】冬はシャトルバスの「トラピスチヌ前」を第一候補にし、路線バスを使うなら滑りにくい靴と時間の余裕を確保する。閉門の1時間前には現地に着く計画にしておくと安心です。
車・レンタカーなら駐車場は隣の市民の森へ
レンタカーで函館を回る人は、駐車場の場所を先に把握しておきましょう。トラピスチヌ修道院には専用の駐車場がありません。車で行く場合は、道路を挟んだ向かいにある市民の森の有料駐車場を利用します。市民の森の売店専用の無料駐車場も2台分ありますが、あくまで売店利用者向けです。
市民の森の駐車場は、小型・普通車で1回200円程度という情報があります。料金は変わる可能性があるので現地の表示で確認してください。空港からも湯の川温泉からも近いので、レンタカーを借りたその足で最初の観光地にするのにも、返却前の最後の立ち寄りにするのにも使いやすい立地です。
注意したいのは、修道院の前の道路に路上駐車して見学することです。敷地の前は観光バスや路線バスも通るので、短時間でも迷惑になります。必ず駐車場に停めてから歩いて向かいましょう。
| 行き方 | 降りる場所 | 向いている人 | 気をつけたい点 |
|---|---|---|---|
| 5系統シャトルバス | トラピスチヌ前(目の前) | 家族連れ・荷物が多い人・冬 | 1時間に1本 |
| 一般路線バス | トラピスチヌ入口(徒歩10分) | 身軽な一人旅・夏 | 正門まで上り坂 |
| 車・レンタカー | 市民の森駐車場 | 空港・温泉とセットで回る人 | 専用駐車場なし |
空港・湯の川温泉から近い立地を生かす
トラピスチヌ修道院のある上湯川町は、函館の中心部から見ると東の外れ、函館山と市街地を挟んで向かい合う高台にあります。函館駅周辺から見れば「少し遠い観光地」ですが、函館空港や湯の川温泉から見ると近所と言っていい距離感です。
そのため、函館駅から往復するより、空港・湯の川側の予定とセットにするのが効率的です。飛行機で函館入りする人は、空港からシャトルバスで先にトラピスチヌに寄り、その後湯の川温泉へ。帰りの便を待つ最終日なら、湯の川温泉をチェックアウトしてトラピスチヌに寄り、空港へ向かう。この順番なら、同じ方向を行ったり来たりせずに済みます。
逆に、函館駅周辺や元町エリアに泊まっていて、トラピスチヌだけのために往復するのは時間がもったいない選択です。函館駅前からシャトルバスに乗ると、五稜郭など途中の停留所を経由しながら長めに乗ることになるので、途中の観光地で降りて回るつもりで計画を立てましょう。
門をくぐったら何が見られる?前庭・聖堂外観・資料室
煉瓦と半円アーチの聖堂を前庭から眺める
門をくぐって最初に目に入るのが、前庭の奥に建つ煉瓦造りの建物です。煉瓦の外壁、半円アーチの窓など、ゴシックとロマネスクの混在するデザインが印象的で、函館の元町にある教会群とはまた違う、落ち着いた重厚さがあります。
現在の聖堂は1927(昭和2)年に再建されたもので、その前の建物が火災で焼失したあとに建て直されたものです。こうした背景を知ってから眺めると、赤茶色の壁一枚一枚にも時間の厚みが感じられてきます。
写真好きの一人旅の人は、前庭の奥まで進んで正面から、少し斜めの位置から、と角度を変えて撮ってみてください。デートなら、門をくぐった直後に全景を見上げる瞬間が一番の見どころです。ただし聖堂は修道生活の場なので、立ち入りが制限されている場所には入らず、前庭から静かに眺めるのが基本です。
資料室で修道女の暮らしをのぞく
売店に併設されている資料室は、トラピスチヌ修道院で数少ない「屋内で見学できる場所」です。院内での生活や修道院の歴史が紹介されていて、外からは見えない修道女の日常を知ることができます。
前庭で建物を眺めるだけだと「きれいな建物だった」で終わってしまいますが、資料室に寄ると「ここで今も人が祈り、働いて暮らしている」という実感がわいてきます。小学生くらいの子ども連れなら、修道女の一日の過ごし方を一緒に見ながら「朝は何時に起きるんだろう」と話すだけでも、旅の記憶に残る時間になります。
見学の際の注意点としては、資料室と売店がつながっているため、買い物客とすれ違う場面が多いことです。展示の前で長く立ち止まるときは通路をふさがないように気をつけましょう。資料室も門の開閉時間に合わせて開いているので、閉門間際に着くとゆっくり見られません。
ステンドグラスのモデルは12世紀フランスの修道院
意外と知られていないのが、トラピスチヌ修道院の聖堂のステンドグラスの由来です。修道院の公式サイトでは、フランス12世紀のオバジン修道院のステンドグラスが、天使園のステンドグラスのモデルとして紹介されています。
シトー会の修道院は、装飾を抑えたシンプルな建築と芸術が伝統で、ステンドグラスも色鮮やかな絵柄ではなく、落ち着いた幾何学的な模様が特徴です。公式サイトの「厳律シトー会とは」のページでは、こうした建築と芸術の写真がまとめて掲載されています。
聖堂内部は通常見学できないため、実物を間近で見られる機会は限られます。訪問前に修道院の公式サイトで写真を見ておくと、外観を眺めるときにも「この壁の向こうにあのステンドグラスがあるんだ」と想像が広がります。
トラピスチヌ修道院は、豪華な展示や体験メニューがある観光地ではありません。意外と知られていないけれど、ここでいちばん印象に残るのは建物よりも「静けさ」です。厳律シトー会では沈黙が修道生活の大切な価値の一つとされていて、前庭に立つと、市街地のにぎやかさから切り離されたような空気を感じます。見学時間が短くても満足度が高いのは、この静けさを味わう場所だからです。
写真を撮るときに気をつけたいこと
建物の外観や前庭の風景を撮影する人は多いですが、ここが祈りの場であることを忘れないようにしましょう。修道女の方が敷地内を歩いている姿をカメラに収めるのは、観光客として避けたいところです。
また、三脚を広げて長時間場所を占領したり、グループで大きな声を出しながら記念撮影をしたりすると、周りの見学者の静かな時間も奪ってしまいます。SNSに載せたい写真を撮るなら、人の少ない開門直後の時間帯を狙うほうが、きれいな一枚が撮れて周囲への配慮も両立できます。
撮影に関する細かなルールは、現地の掲示や案内に従ってください。立ち入りを制限している場所や、撮影を控えるよう案内されている場所では、決められたルールを守ることが何より大切です。
明治31年から続く歴史と、今も続く修道女の暮らし
フランスから来た8人の修道女と「天使園」の始まり
トラピスチヌ修道院は、1898(明治31)年に、フランスのナンシー近郊のウプシー修道院から派遣された8名の修道女によって創立されました。この創立には、パリ外国宣教会のアンドレ・ベルリオーズ司教の尽力があったと、修道院の公式サイトで紹介されています。
ベルリオーズ司教は1893(明治26)年に70ヘクタールの土地を購入しており、発足当時は、その土地に建てられた旧孤児院を修道院として使っていました。北海道にキリスト教を伝えるには、祈りと労働の尊さを示すトラピストの精神的な支えが必要だ、と考えられたことが背景にあります。
歴史好きの人なら、函館の元町にある教会群とあわせて「明治の函館になぜこれほど多くの外国の宗教施設が集まったのか」という視点で回ると、街の見え方が変わります。修道院の歴史の詳細は、公式サイトの「厳律シトー会とは」にまとまっています。
大嵐と火災を乗り越えて1927年に再建
トラピスチヌ修道院の歴史は、順風満帆ではありませんでした。1903(明治36)年、一夜の大嵐で木造の修道院は崩壊。その2年後に、レンガ造り2階建ての本館正面棟の一部が完成しました。
1913(大正2)年までに本館正面棟と聖堂が竣工しますが、1925(大正14)年に発生した火災で焼失してしまいます。その後、教皇ピオ11世からの義援金や各修道院からの寄付金で、1927(昭和2)年に再建されたものが現在の建物です。
前庭から見上げる煉瓦の聖堂は、こうして二度の大きな災難のあとに建て直されたもの。建物の美しさだけを見て帰るのはもったいないので、見学前にこの流れを頭に入れておくと、現地で眺める数分間の重みがまるで違ってきます。
1893年:ベルリオーズ司教が70ヘクタールの土地を購入
1898年:8名の修道女により創立(日本初の女子観想修道院)
1903年:大嵐で木造の修道院が崩壊
1913年:本館正面棟と聖堂が竣工
1925年:火災で本館正面棟と聖堂が焼失
1927年:再建、現在の建物に
2016年:定休日なしに
祈りは1日7回、3時半に起きる暮らし
修道女たちは、祈り、労働、聖なる読書を日課の3本柱に共同生活を送っています。祈りは3時半の起床から19時45分の就寝までに7回。ミサと聖務日課を共同で行い、神を賛美し、感謝の祈りを捧げる生活が、今も毎日続いています。
観光客が前庭を歩いている昼間の時間も、壁の向こうでは決められた時間割に沿って祈りや作業が行われています。そう考えると、「静かにしましょう」というマナーが、単なるルールではなく、ここで暮らす人への当然の配慮だと実感できるはずです。
修道院の公式サイトには「修道院の生活」というページがあり、祈り、労働、聖なる読書、姉妹たちとの交わり、もてなしなど、生活の各側面が紹介されています。資料室と合わせて読むと、30分の見学が「建物見物」から「暮らしを知る時間」に変わります。
「祈り、働け」の精神とお菓子作り
厳律シトー修道会では、創立者たちの精神に従い、額に汗して働く肉体労働(手仕事)を大切にしています。売店で売られているマダレナケーキやクッキーは、修道院が生計を立てるための収益事業として作られているものです。
つまり、売店でお菓子を買うことは、単なるお土産選びではなく、修道院の暮らしを支えることにもつながっています。こうした背景を知ると、素朴な焼き菓子ひとつにも、ここで暮らす人たちの一日の時間が込められていると感じられます。
一方で、手作りである以上、作れる量には限りがあります。人気の商品や大きな箱入りは、時期によって品切れになることもあるので、「必ずこれを買って帰る」と決め打ちしすぎないのが、気持ちよく買い物をするコツです。
修道院のお菓子は何を買う?マダレナ・クッキーの値段と選び方
看板はフランスケーキ「マダレナ」
トラピスチヌ修道院のお土産といえば、まず名前が挙がるのがフランスケーキの「マダレナ」です。原材料は小麦粉、鶏卵、バター、砂糖というシンプルな構成の無添加の焼き菓子で、シスターが祈りを込めて手作りしています。
見た目は素朴な焼き色の小さなケーキで、口に入れるとバターの香りがふわっと広がり、ほろっとした素朴な食感と甘さがどこか懐かしい味わいです。派手さはありませんが、コーヒーや紅茶と一緒にゆっくり味わいたくなるタイプのお菓子です。
サイズ展開は、修道院製品を扱うオンラインショップで確認すると、マダレナ3個入りが720円、マダレナ6個 箱入りが1,380円、マダレナ12個 箱入りが2,630円です。自分用やちょっとしたお礼なら3個入り、職場や家族へのお土産なら6個入り、と人数に合わせて選びやすい構成です。大きな箱はオンラインで売り切れ表示になっている時期もあるので、確実に手に入れたいなら売店で買うのが基本と考えておきましょう。
プレーンとココナッツ、2種類のクッキー
マダレナと並ぶ定番が、プレーンとココナッツの2種類のクッキーです。プレーンクッキーは厳選したシンプルな素材で作られた、飽きのこない味。ココナッツクッキーは、良質なココナッツの風味と甘さが口いっぱいに広がるのが特徴です。
価格はどちらも同じで、5個入りが640円、10個入りが1,250円です。軽くて割れにくい箱入りのお菓子は、飛行機移動の多い旅行者にとって持ち帰りやすいのが魅力。プレーンとココナッツを1つずつ買って、食べ比べを楽しむのもおすすめです。
注意したいのは、クッキー類がオンラインショップで売り切れ表示になっていることが多い点です(2026年9月時点で確認)。「帰ってから通販で買えばいい」と考えていると、次に買えるのがいつになるか分かりません。現地で気に入ったら、その場で買っておくほうが後悔しません。
チョコレートや一筆箋など、お菓子以外も
お菓子では、ホワイトミルクチョコレートが750円で扱われています。そのほか、オンラインショップには一筆箋(20枚綴り)が520円で並び、CDや書籍、聖像カード、クリアファイルなど、修道院らしい品も揃っています。
甘いものが苦手な人へのお土産や、旅の記念に自分用に残るものを買いたい人には、一筆箋のような紙ものがちょうどいい選択肢です。かさばらず、軽く、旅の途中でも荷物の負担になりません。
また、売店には、この修道院で作られた商品だけでなく、各地の修道院で作られた商品も置かれていることがあります。どの品がどこの修道院のものかは、パッケージの表示を見て確認しましょう。トラピスチヌ修道院の製品を買いたい場合は、表示を見ずにカゴに入れると別の修道院の品だった、ということもあり得ます。
| 商品 | 価格 | こんな人に |
|---|---|---|
| マダレナ3個入り | 720円 | 自分用・お試し |
| マダレナ6個 箱入り | 1,380円 | 家族・少人数の職場 |
| マダレナ12個 箱入り | 2,630円 | 大人数への配りもの |
| プレーン/ココナッツクッキー5個入り | 640円 | 食べ比べ・ちょっとしたお礼 |
| プレーン/ココナッツクッキー10個入り | 1,250円 | 持ち運び重視のお土産 |
| ホワイトミルクチョコレート | 750円 | 焼き菓子以外を探す人 |
| 一筆箋(20枚綴り) | 520円 | 甘いものが苦手な人・記念品 |
さっぽろノート調べ(2026年9月、修道院製品のオンラインショップ「サンパオリーノ」掲載価格。売店での価格・在庫は現地でご確認ください)
売店で買うか、通販で買うか
修道院のお菓子は、修道院の売店のほか、オンラインショップ(サンパオリーノ)でも扱われています。旅行中に荷物を増やしたくない人は「通販で買えばいいか」と考えがちですが、ここには落とし穴があります。
売店で買う一番のメリットは、その場で在庫を見ながら選べることです。一方、オンラインショップはクッキー類や大きな箱入りのマダレナが売り切れ表示になっている時期があり、欲しいタイミングで買えるとは限りません。
函館のほかのお土産とあわせて選びたい人は、函館全体のお土産事情を先に押さえておくと、売店で「これは今ここで買うべきか」を判断しやすくなります。

函館のお土産売り場に立つと、似たような箱が壁一面に並んでいて、どれを選べばいいのか手が止まりませんか。チーズケーキ、修道院のクッキー、レトルトカレー、地元限定の…
【状況】売店でクッキーを試しに1箱だけ買い、帰宅後に家族から好評だったので通販で追加しようとしたら、オンラインショップは売り切れ表示だった。
【原因】手作りで生産量に限りがあり、通販の在庫が常にあるとは限らないことを知らなかった。
【対策】気に入りそうなものは現地で必要な数だけ買っておく。配る予定がある人は、人数分を数えてから売店に入ると買い忘れを防げます。
市民の森・湯の川温泉とどう組み合わせる?シーン別の回り方
向かいの市民の森で1.5時間コースに
トラピスチヌ修道院の見学は30~45分ほどで終わるので、時間に余裕がある人は、道路を挟んだ向かいにある市民の森とセットにするのがおすすめです。修道院と市民の森をあわせると、1.5時間ほどでゆったり回れます。
市民の森は散策するのに十分な広さがあり、園内には遊具や広場、ベンチや東屋もあります。初夏はアジサイの見どころとしても知られていて、約1万3千株のアジサイ園が見事です。ビジターセンターの売店では北海道のソフトクリームが450円程度で売られていて、修道院を見学したあとのひと休みにちょうどいい存在です。
子ども連れの家族なら、修道院では静かに過ごし、市民の森で思いきり体を動かす、というメリハリのある組み方ができます。ただし、アジサイの見頃は初夏に限られるので、季節によっては「散策だけの公園」になる点は理解しておきましょう。
初夏の市民の森は約1万3千株のアジサイ園が見頃を迎え、修道院の静けさと花の散策を一度に楽しめます。この時期に函館を訪れるなら、修道院だけで引き返さず、道路を渡って向かいの森まで足を延ばしてみてください。
湯の川温泉とセットにする旅程の組み方
湯の川温泉に泊まる人は、トラピスチヌ修道院を旅程のどこに入れるかで一日の動きやすさが変わります。おすすめは、チェックアウト後の午前中に寄るパターンです。開門直後の静かな時間帯に見学し、その後に函館空港や市街地へ向かえば、移動に無駄が出ません。
反対に、湯の川温泉へのチェックイン前に寄る場合は、閉門時刻に注意が必要です。冬なら16:00には門が閉まるので、空港に昼過ぎに着く便なら、そのまま修道院へ向かうくらいのスケジュール感で動く必要があります。
湯の川温泉を拠点にしつつ、五稜郭など市街地の観光も組み合わせたい人は、シャトルバスのルートを軸に考えると効率的です。五稜郭の見学にどのくらい時間がかかるかは、別の記事で目安をまとめています。

函館観光の予定を組むとき、五稜郭にどれくらい時間を取ればいいのか迷う人は多いはずです。「タワーに登るだけなら30分で足りる?」「箱館奉行所も見るなら半日必要?」…
一人旅・カップル・家族、それぞれの楽しみ方
トラピスチヌ修道院は、誰と行くかで楽しみ方が変わります。旅のスタイル別に、向いている過ごし方を整理しておきます。
| こんな人に向いている | こんな人は物足りないかも |
|---|---|
| 静かな場所で気持ちを整えたい一人旅の人 歴史的な建物を背景に写真を撮りたいカップル 空港・湯の川温泉の近くで短時間観光したい人 素朴な手作り菓子をお土産にしたい人 | 教会の内部やステンドグラスを間近で見たい人 体験型のアトラクションを期待している人 函館駅周辺だけで観光を完結させたい人 年末年始に訪れる予定の人 |
一人旅なら、開門直後の静かな時間に前庭のベンチ付近で少し立ち止まり、資料室で修道女の暮らしを知るだけでも、旅の中に落ち着いた時間が生まれます。カップルなら、煉瓦の聖堂を背景にした写真と、マダレナを分け合うひとときが思い出になります。家族連れは、修道院で静かに過ごしたあと市民の森で遊ぶ流れにすると、子どもも大人も満足しやすくなります。出張ついでの人は、函館空港に向かう前の最後の立ち寄りとして組み込むのが現実的です。
クリスマスや復活祭など、一般参加できる行事
普段は聖堂の中に入れないトラピスチヌ修道院ですが、年に数回、一般参加者を募集する行事があります。毎年12月24日・25日の「クリスマス・ご降誕のミサ」、3月末~4月初めの「復活徹夜祭」、8月15日の終戦記念日の「平和の祈りの集い」です。これらの行事では、一般の参加者も聖堂に招かれて臨席することができます。
聖堂の内部に入れる数少ない機会なので、クリスマスシーズンに函館を訪れる人には特別な体験になります。ただし、これは観光イベントではなく、あくまで信仰の行事です。参加する場合は、ミサの流れを妨げないよう静かに臨席する心構えが必要です。
募集の詳細は年によって異なるため、参加を考えている人は、修道院の公式サイトのお知らせや、はこぶらのニュースで事前に確認してください。2026年8月にも「世界平和のための祈りの集い」への参加者へのお礼が公式サイトに掲載されていて、こうした行事が毎年続いていることがわかります。
まとめ:天使の聖母トラピスチヌ修道院は「静けさ」を味わう30分
まずは函館滞在のどの日に空港・湯の川エリアを通るかを確認し、その日の午前中にトラピスチヌ修道院を入れてみてください。帰りのバスの時刻をバス停で確認してから、静かな前庭でゆっくり過ごしましょう。
※開門時間・バスの運行・商品の価格や在庫は変更される場合があります。最新情報は修道院の公式サイトやはこぶらでご確認ください。

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